私の恋心と彼らの執着
──2か月後。
昼間が少しずつ短くなり、気候が秋から冬へと移っていく頃。
週末、私は引っ越し準備の仕上げをしていた。
「これ、こっちの箱でいいのか?」
「あ、雑誌は全部捨てるわ。だから玄関に置いといて」
「了解」
ひとりでやるつもりだったけど、昨日の退社前に荷造りの状況を聞かれて、ついこぼしてしまったのだ。
『……実は、まだ半分もできてない』
『だろうな。おまえ昔っから整理整頓ヘタだもんな』
明日手伝いに行ってやるよ、という文隆の申し出に、甘える形になった。
さすがに男手があると違う。本や食器を詰めた重い箱がみるみる積み上がっていき、ゴミ袋10個分のゴミ出しも2往復で済んだ。
私は、会社を辞めることにした。
紀野課長がいなくなっても、事あるごとにきっと私は、あれこれを思い出してしまう。だから思い切って、課長と関わった場所すべてから離れる方がいいと思った。
退職を申し出た時、課長はちょっと目を見張ったけれど、引き留めるような言葉は出さなかった。
『再就職の当てはあるのか』と聞かれたから『はい』と答えておいた。
本当は求職真っ最中だったけど。
営業事務しかやってこなかった30前の女に、たいした求人は無い。
それでもなんとか、今よりは小規模な会社ながら、事務職に採用してもらうことができた。
ただし隣の県だから、今の家からは通えない。