ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

 うなずきながら気恥ずかしさに慎一郎さんを見上げると、彼は眉をひそめて花菱様を睨んでいる。

「なんだよ。まさか狙っていたとか言うなよな」と、私の腰を抱く手に力が入った。

 そんなわけないでしょうに。
 花菱様はあなたに負けず劣らずモテるんですよ? 私など狙う理由がありませんからね。

 氷室さんはポンと花菱様の肩を叩く。

「コルヌイエの高嶺の桜って言われましたもんね、彼女」
 またまた、氷室さんまでご冗談を。

「仁もそういや、コルヌイエのバーの常連とか言ってたな」

 その通りです慎一郎さん。彼はよくデートにご利用してくださるんです。
 
「慎一郎さんは花菱様ともお友達だったんですね」

「ああ、彼は青扇の一年後輩だからな。そういえばコルヌイエは青扇の同窓会もやっているか」

「ええ。それはもう華やかで。でも慎一郎さんは?」

 多分だけれど見た記憶がない。

「俺はそういうのは参加しないから」

 やっぱり。
 患者さん以外には、つれない人ですもんね。あなたは。


 私たちはテーブル席に移動した。

「シン兄の結婚相手が、コルヌイエの夕月さんだったとはなぁ」

 花菱さんも彼をシン兄と呼ぶ。

「慎一郎さん、シン兄って呼ばれているんですね」

「まあ、こいつらだけな」と、慎一郎さんは瞼を伏せる。

 なんか照れてる?
 今夜は私の知らない慎一郎さんを見られそうだ。

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