君はブルー【完】
多分、家守さんに会うことも。
私の一番は優くんで、家守さんの一番は奥さんだったはず。私たちはお互いが二番目だったからこそ成り立つ関係だったのに。
家守さんが家守さんの奥さんのものであったから、安心して会うことができたのに。水曜日の寂しさを埋めてくれた、家守さん。
もう会えない。
「……あのさー、春」
嫌な予感がする。
優くんは申し訳なさそうな顔を作ってるけど、内心私が断わるわけがないって確信してる。
次の言葉は予測できた。
「本当に悪いんだけど、この後、仕事戻らないといけなくなってさ」
ああやっぱりね。って気持ちと、またかって気持ちと、もうやだって気持ちがごちゃまぜになるけど、優くんの思惑通り、嫌われたくない私はべったりと笑顔を張り付けた顔面で頷く。
「仕事ならしょうがないよね」
「ごめんな」
「ううん、ちょっとでも時間作ってくれて嬉しかったよ」
きっと優くんは朝まで帰らない。不倫相手と一緒に過ごすんだろう。
優くんはどうして不倫なんかするんだろう。家守さんはどうして奥さんを裏切ったんだろう。私はどうして優くんじゃなきゃだめなんだろう。同じことをしてみたけれど、ちっとも分からなかった。
復讐や仕返しと言ったって、優くんは私の変化に気付くほど私に興味がないんだろう。たとえ私と家守さんの関係を知ったって、問い詰めることさえ面倒がるかもしれない。
本当は、優くんさえ私のそばにいてくれたなら、本当は、私は他にはなにもいらないのに。
私は家守春にはならない。春木春のまま、ハルハルって呼ばれながら、ピンクが似合う名前なのに、好きな人の前ではブルーの衣類を身にまとう。
青い石の埋め込まれたピアスを無意識に撫でながら、落とした視線の先に広がるワンピースの淡い青が虚しくて、悲しくて、視界が歪んだ。
私の愛は、そういう愛なのだ。