9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
(またこのやり取り。人生八度目ともなると、さすがに飽きてきたわね)

セシリアがそんなことを考えていると、通りかかった侍女ふたりと目が合った。

彼女たちは驚いたようにいちゃつき合っているエヴァンとマーガレットを見て、再び柱の陰にいるセシリアに視線を戻すと、コソコソと陰口をたたく。

「ちょっと、王妃様そこにいるじゃない、気の毒だわ」

「でも、陛下の言われていることは間違っていないわ。大した家柄でもなく、魔法も使えない役立たずの聖女様など、愛されなくて当然だもの」

それから露骨な蔑みの視線をセシリアに向けながら、セシリアの横を通り抜けて行った。

エヴァンはマーガレットの肩を抱いたまま、客室のひとつを開けて中に入っていく。

そしてドアが閉まる直前、勝ち誇ったような視線を、柱の陰にいるセシリアに投げかけた。

どうやら彼も、セシリアの存在に気づいていたようだ。
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