9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
こうして見せつけるように不貞を働かれたのは、今回の人生でも一回や二回ではない。

八度の人生を通算すると、百回近くに上るのではないだろうか。

それこそ二度目や三度目の人生のときは傷ついたが、今となっては、エヴァンの不貞など気にしていない。彼が誰を愛そうが抱こうが構わない。

どんなに努力しても、彼がセシリアだけは愛してくれないことは、もう痛いほど分かっているから。

それを踏まえた上で、セシリアには大事な使命があった。

だから八度目の今回、誰にも気づかれないように薬を開発し、その後は地下聖堂で祈り続ける毎日を送っているのだ。

――この国の誉れ高き王である、エヴァンの命を救うために。

エヴァンとマーガレットが消えていったドアを、セシリアは感慨深く見つめた。

エヴァンがいまだ生きている――そのことだけに、ひたすら喜びを感じながら。

(今日もお元気そう。私の祈りは通じているんだわ)
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