9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
我に返ったセシリアは、スカートをつまみ、優雅に淑女の礼をした。

それからにっこりと微笑む。

「失礼いたしました。夜会のことですが、私は構いません。どうぞマーガレット様と楽しんできてくださいませ」

夜通し考え事をしたいので、むしろその方が都合がいい。

今までの人生では、エヴァンを死なせてしまったショックから震えてばかりいたが、今回は正真正銘の最後。

怯えている場合ではないのだ。早急に、対策を考えなければならない。

「……っ!」

早く立ち去って欲しくてニコニコと微笑み続けていると、エヴァンはなぜかムッとした顔をする。

「まるで喜んでいるような顔だな。それほど俺と夜会に行くのが嫌だったか」

この場面はこれで八度目だが、彼のこんな態度を見るのは初めてだった。

いつもは『しょ、承知しました……』と震え声を出すセシリアを見て、うっすらと満足げな笑みを浮かべていたのに。

(自分から私を振っておきながら、快く承諾すると不機嫌になるなんて、どういうおつもりなのかしら?)

八回も人生をやり直していても、分からないこともあるものだ。

相手にする時間すら惜しく、セシリアはもう一度小さく礼をすると、九度目の人生計画を考えるために踵を返してその場をあとにした。
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