9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
セシリアは、これまでのやり直し人生の中で、何度もここを訪れ大事な知識を得た。

時空魔法について知ったもの、エヴァンが死んでしまうのは聖女であるセシリアを蔑ろにしているからだと気づいたのも、美容や疫病の知識を得たのも、すべてここからだった。

重厚な本を書架から取り出し、机の上で、ため息をつきながら捲る。

エンヤード王国の歴代の王について書かれたこの文献には、八度の人生で繰り返し目を通してきたため、今では諳んじれるレベルである。

「はあ……。まったくいい案が思い浮かばないわ」

思わず独り言を言ったとき、「これはこれは、セシリア様」というしわがれた声がした。

白くて長い髭を生やし、深緑色のローブを羽織った老人が、机の向かいでニコニコと微笑んでいる。

図書館長のシザースだった。
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