9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
セシリアが王城に上がったばかりの十歳の時も、今までの人生で一番長く生きた二十五歳のときも、彼の見た目はまったくといっていいほど変わっていない。

何歳なのかは知らないが、二百年生きていてもおかしくないと思ってしまうような風貌である。

「何かお悩みですか?」

老人の温厚な表情を目にしたとたん、セシリアの心が少しだけ和んだ。

セシリアに冷たく接する者が多い中で、この老人は、どの人生でもいつも親切だった。

こうやって毎回セシリアに声をかけ、悩みを解決する書物をどこからともなく持って来てくれる。

「その……。聖女として私は殿下にどう接すれば役に立てるのか、悩んでいるのです」

複雑な悩みをおおっぴろげにするわけにもいかず、セシリアはぼかして伝えた。

「ふむ」

するとシザースは、あごひげを撫でながらセシリアをじっと観察する。

それからおもむろに語り出した。
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