9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
ふと初めて会った日、セシリアの花冠のシロツメクサをひとつちぎって、自らの紐ボタンに結わえたエヴァンの姿を思い出す。

気品あふれる笑顔に、優しい眼差し。

エヴァンはダリス教に聖人はいないと言ったが、セシリアにとっては聖人以外の何者でもなかった。

あのときのことを思い出すと、今でも胸が温かくなる。

セシリアの大事な初恋――。

(やはり、この命に代えても、エヴァン様をお救いしないと)

セシリアは気持ちを新たに、また知恵を振り絞った。

エヴァンは何が何でもセシリアを正妃にするつもりだ。

それは、彼の愛国心が強く、ここエンヤード王国では聖女が正妃となるのが当然と思っているからだ。それなら――

(私が、聖女でなくなればいいだけの話だわ)

セシリアはゴクリと唾を飲み込んだ。
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