9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
すぐに従者がふたりの間に割り込んできて、セシリアがこれ以上エヴァンに近づかないよう、圧をかけてくる。

「殿下……っ!」

必死の叫びも虚しく、エヴァンは振り返ることのないまま、城の方に姿を消した。


その日の夜。

セシリアは自室の出窓に頬杖をつきながら、またもや物思いにふけっていた。

夜会の開かれている祝宴の間の方から、軽快な管弦楽の音色や、人々の上品な笑い声が絶え間なく響いている。

エヴァンもきっと今頃、マーガレットとダンスに興じているのだろう。

(婚約破棄はできないとなると、どうすればいいの?)

セシリアは大きくため息をついた。

窓辺に生けたシロツメクサの花が、夜風に揺れている。

今日の昼にループしてきたばかりなので、この人生での記憶は曖昧なのだが、おそらく昨日庭で手ずから摘んだものだろう。
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