9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
だから彼女が大の男ふたりに盾突き、おまけに投げ飛ばしたのを目にしたとき、俄然興味を抱いたのだ。

そのあとで、介抱した彼女に抱いて欲しいと懇願されたのは、予想外だったが。

(女があんなにいいものだとは思わなかった)

ランプの灯りだけが頼りの薄暗い部屋に浮かび上がる、透き通った白い肌。

華奢に見えた身体は、脱がせてみれば見事な曲線美を描いていて、己の男の本能が火を噴いたのを覚えている。新鮮な経験だった。

柔らかな温もり、恥じらうような甘い声。

(いや、彼女だからよかったのか)

齢二十四にもなって、デズモンドは女を抱いた経験がなかった。

裏表が激しく、強烈な香水の匂いをまき散らし、したたかな目ですり寄る女という生き物を激しく嫌悪していたからだ。

あの無駄に柔らかな身体を押しつけられれば、今すぐ首を刎ねたいほどの殺意すら湧き起こる。
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