9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
セシリアだけ茶会に呼ばれないのは日常茶飯事。

ときには廊下を歩いている途中で水が降ってきたり、部屋に置いていたドレスがズタズタにされたりすることもあった。

そもそもそのドレスも、実家のランスロ―子爵家からはろくに用意もなく、エヴァンもめったに仕立ててくれなかった。

たまに仕立ててくれても、必要最小限の、地味な目立たないドレスばかりである。

『君を聖女だとは認めない』
『俺が君を愛することはない』
『何度も言ったが、俺に君は必要ない』

とりわけ辛辣な言葉で容赦なくセシリアの心を踏みにじったのは、婚約者のエヴァンだった。

本当はマーガレットを正妃に迎えたかったのに、セシリアが聖女になったせいで願い叶わず、憎んでいるのだろう。

ちなみにマーガレットは、火と水の魔法を器用に扱う。

それゆえ彼女もまた、聖女ながらに魔法が使えないセシリアを、人の目がないところで繰り返し馬鹿にした。
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