彼の指定席


黙ったまま、ただ困惑しているだけの彼を前にして。

どう接したらいいのか、分からなくて……。



あたしは、仕事だと嘘をつき、慌ててゲーセンを出て行った。



はじめて彼の名前を知った。


――増永……弘樹。


あたしは沙織みたいに、「ヒロくん」なんて呼べないけれど。



今はそれだけでじゅうぶんだよ。



< 42 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop