しづき
「いや…ですよ。何されるか分からないし。その言葉も、罠かもしれないし…」
そうだ。そうだよ。
優しいフリしてやばい人なのかもしれない。
(この時点で十分やばいけども)
「それに、誰かに売られたりするかも…しれないし」
そんな私のつぶやきに、男の眉がピクリと動いた。
「売る?汐月を?ぼくが?」
私を見つめていた瞳から優しさがふっと消える。
ぞくりとした。
「汐月はぼくのなのに、そんなことするわけないでしょ。誰にもあげないよ」
少し間を置いて放たれたのは、執着だけで形作られた言葉だった。