しづき


優しく、じんわりと鼓膜を揺さぶる声に、ゆっくりと振り向いた。



「汐月?」


「しろ…」



ぎゅうと抱きしめた。



傷ごと包み込んでくれる男を
私が包み込む。





「ありがとう」





偽りのない言葉だった。



もう、あの人たちの顔を思い出しても
怖いだなんて思わない。



大丈夫だって

白が教えてくれたから。



「し、しし汐月…っ」


「白……すきだよ」


「好き?!好きって言った?!」


「ふふ、どうかな」



とぼけてみせる私、真っ赤な白。



やっぱりこの人、不意打ちに弱い。



いつも私よりうわてなのに、かわいいなぁ。



「あーもう、また抱きたくなってきた」

「だめです…んっ」



強引にくちびるを奪われる。



「遠慮しないで汐月。分かってるから。
さっさと一つになって溶けちゃおーか」


「もう!へんたい!」


「へへ、汐月だいすき」




ムードを率先して壊していく白。


浴室に響く笑い声。



こんな時間が
いつまでも続けばいいと思った。



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