Rain or Shine〜義弟だから諦めたのに、どうしたってあなたを愛してしまう〜

「瑞穂に聞いたんですよ。やることがたくさんあるって。それならむしろ観光でもしながら休息を与えることも大切じゃないかと思いましてね。近頃はほとんど外にも出ていないと言いますし、たまには家族水入らずの時間をゆっくり過ごさせてやるのも優しさかと思いましてね」

 崇文が黙り込むのがわかる。必死に次の一手を探しているのだろう。だがそんなことはさせない。

「そういえば澤村さん、聞きましたよ。今抱えている案件、かなり難しいものだそうですね」

 これは事実だった。知り合いの弁護士からの情報で、自分の力量に合わない案件ばかりを引き受け、負けが続いているらしい。

「瑞穂のことは気にせず、そちらの準備に時間を使ってください。《《今度こそ勝てるといいですね》》」

 電話口の向こう側から舌打ちが聞こえる。相当腹が立ったに違いない。だとしても瑞穂への行いは、こんなものでは済まされない。

「……わかりました。日曜日の夜には妻を帰らせてください」
「なるべく譲歩しましょう。まぁ……状況次第ですが」

 そしてすぐに恵介は電話を切る。沸々と湧く怒りをグッと堪えた。

 あんな奴のところに瑞穂を帰してなるものか。それから恵介はスマホを持ち直し、別の場所へと連絡を入れた。
< 23 / 53 >

この作品をシェア

pagetop