Rain or Shine〜義弟だから諦めたのに、どうしたってあなたを愛してしまう〜

「母さん、元気過ぎる……」
「あはは! でも久しぶりに声が聞けて嬉しかった。ありがとう……」
「ようやく瑞穂の笑い声が聞けたな。それにありがとうも」
「えっ……」
「気付いてなかった? 瑞穂、ずっと"ごめんなさい"しか言ってなかったんだ」

 つい謝ることが癖になっていた。それが自分を守る合言葉だったから。悪いことを認めないと許してもらえない。だったらすぐに謝ってしまえばいい。

「あっ……ご……」

 言いかけて、その口を恵介の手によって塞がれる。

「ここはごめんなさいじゃないよ。俺は質問したんだから、イエスかノーで答えればいい」

 恵介が手が離れ、瑞穂はゆっくり考えてから口を開いた。

「……気付いてなかった……」
「うん、じゃあ今気付けて良かった」
「……気付かせてくれてありがとう」
「いいね、二回目の"ありがとう"。嬉しくて調子に乗っちゃいそうだ」

 嬉しい? ただ"ありがとう"って言っただけなのに? 思いがけない言葉に、瑞穂の方が嬉しくなる。こんな気持ち、ずっと忘れていた。

「そうだ。さっき買ってきた服をクローゼットに掛けたから、明日はそれ着て出かけよう」
「……出かける?」
「そう。レンタカー予約したし、瑞穂のお義兄さんにも許可を取ったから安心して。明後日まで楽しもう」

 "お義兄さん"と聞いた途端、体に震えが走る。

「大丈夫だよ。何もなかったから」
「……本当?」
「本当。心配しなくていいよ」
「わかった……」

 どうして恵介の言葉はこんなにも安心出来るのだろう。それはきっと、私が崇文よりも信頼して心を開いているから……。
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