Rain or Shine〜義弟だから諦めたのに、どうしたってあなたを愛してしまう〜
 悪いことをしてるのに、なんでこんなに幸せなんだろう……。背徳感を覚えながらも、この満足感には抗えない。

「恵介……こんなことを言ったらいけないのはわかってる……でももう無理……。私もうあの人の元に帰りたくない……恵介といたいの……」

 思わず口にしてしまった。瑞穂はハッとして顔を逸らす。どうしよう……なんてことを言ってしまったんだろう……! 後悔の念が瑞穂の心を駆け巡る。

 すると恵介の動きがピタリと止まったかと思うと、耳元にキスをされた。

「やっと言ってくれた」

 恐る恐る恵介の顔を見ると、瑞穂に柔らかな笑みを向けていた。

「そう言ってくれるのをずっと待ってたんだ」
「……どういうこと?」
「瑞穂の意思で俺を選んで欲しかったんだ。誰かに言わされるんじゃなくて、自分の言葉でも言って欲しかった」
「……だって、これは正しいことではないでしょ……?」
「正しいことだよ。確かに俺たちがしていることは正しくはないかもしれないね。だって瑞穂には配偶者がいるんだから。だけど暴力から逃げたいと思うのは間違いじゃない。正しいことなんだ。DV被害に遭っている人は、その意思を持つことがいけないことだって思ってるけど、まず第一歩なんだよ」
「……私、あの人から逃げてもいいの?」
「当たり前じゃないか。瑞穂は瑞穂なんだ。瑞穂は瑞穂自身のもので、誰のものでもないんだよ。瑞穂はちゃんと真っ直ぐ生きてる。もっと自分を肯定していいんだ」

 溢れ出る涙を、恵介はキスをしながら拭っていく。
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