エリート警察官の溺愛は甘く切ない
そのままリビングのソファーに座って、じーっとテーブルを見た。

「はい、お茶。」

母さんが淹れてくれたお茶から、ゆらりと湯気が出る。

「どうしたの?黙って。」

母さんが私の隣に座る。

「ねえ、母さんは父さんが黙ったまま、何も話さなかった時は、どう思うの?」

「どう思うって、そうねえ。何も思わないわね。」

意外な言葉に、私は目が点になった。

「つまらない。何考えてんだろって、思わない?」

「結婚したての頃はね。そう思ってたわよ。でも、ずっと一緒にいるとね、そういう時間もあっていいと、思うのよ。」


ずっと一緒にいると。

少なくても私と圭也さんは、この前のお見合いで会ったばかりだ。

それなのに、黙っていても居心地がいいだなんて、思えない。

なのに……

またあの言葉を思い出して、胸がドキドキしてくる。


「何?もしかして、何もしゃべらなかったの?」

「うん。」

「ふふふ。初々しいわね。」

「初々しい?」

「緊張して、何も言葉が出てこなかったんでしょ。」
< 12 / 90 >

この作品をシェア

pagetop