エリート警察官の溺愛は甘く切ない
うーんと、私は考えた。

これがまだ高校生や、大学生だったら分かる。

けれど私達は、三十路を過ぎたいい歳した大人だ。

異性とデートするなんて、もう慣れているだろうに。


「じゃあ、紗良はつまらなかったの?」

「うん。つまらなかった。」

「それは残念だったわね。」

「残念……」

確かに残念だった。でも、私は今、前向きな気持ちでいる。

「でもね。それもいいなぁって、思ったの。」

「まあ。そう。」

母さんは、すごく喜んでいた。


そして帰って来た父さんに、その話をした。

父さんは喜んで、相手の一条さんの家に、このお話を受けたいと伝えた。

「えっ?断る?」

父さんは電話口で、驚いていた。

「ええ、圭也君がそう言っていたんですね。分かりました。」

電話を切った父さんは、ため息をついた。

「どうしたの?父さん。」

「結婚の話はなかったことにして欲しいと、圭也君から話があったそうだ。」
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