エリート警察官の溺愛は甘く切ない
「言ってないけど、作ったから持って行って。」

お弁当に蓋をし、保温バッグに入れた時だ。

「ああ……いいや。」

「えっ?」

「お弁当、いらない。」


何かが私の胸にグサッと刺さった。

「どうして!」

「どうしてって……いつ帰れるか分からない時もあるし。」

いやいや、遅くても毎日、帰って来てるじゃないか。

「今は、皆が新婚だから、帰してくれているけれど、その内、毎日帰れなくなる。」

「そんなに忙しいの?」

「うん。だから、毎日帰ってくるのが、当たり前だとは思わないでくれ。」

モリモリ、朝ご飯を食べているこの姿も、見れない時もあるって事?


「ごめんな。」

「どうして謝るの?」

「いや、なんか暗い顔をしているから。」

私は、ぎゅっと手を握った。

確かに、お酒は飲めないし。

金属アレルギーで、結婚指輪もできないし。

理想の結婚とは、遠いけれど。

まさか、毎日顔を見れない時もあるなんて。
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