エリート警察官の溺愛は甘く切ない
顔色が悪い。

「ねえ、圭也さん。起きて。」

圭也さんを揺らしてみる。

「圭也さん!」

すると、看護師さんが私の背中をそっと、撫でてくれた。

「目が覚まされましたら、教えて下さい。」

「えっ……」

看護師さんはうんと頷くと、行ってしまった。


私は椅子に座ると、圭也さんの手を握った。

胸の辺りからちらっと見える包帯。

腕にも、頭にも巻いてある。

良く見れば、痛々しい。


「圭也さん、今日ね。妊娠検査薬を試してみたの。」

目を閉じている圭也さんに、話しかけた。

「そうしたらね、陽性だって。赤ちゃん、また私達の間に来てくれたのよ。」

そんな話をしたら、涙が出て来た。

「だからお願い、目を覚まして。」

必死に圭也さんに訴えた。

「死なないで!圭也さん!」

このまま、赤ちゃんができた事も知らずに死ぬなんて、ダメだよ!
< 88 / 90 >

この作品をシェア

pagetop