エリート警察官の溺愛は甘く切ない
「今日は来てくれて、ありがとうございます。」

「いえ、こちらこそ。誘って頂いて、嬉しかったです。」

在り来たりな会話。

一種の社交辞令だ。

「じゃあ、行きましょうか。」

「はい。」

駅を出て、目の前が美術館だ。

横断歩道を渡って、美術館の入り口に向かう。


「美術館って、来ます?」

「えっ……いや、何年も来てないです。」

何年どころか、前に来たのは、子供の頃かもしれない。

はっきり言って、デートに美術館という選択肢はなかった。

「僕もです。あっ、警察官になると、美術館とか博物館の無料チケットが配給されるんです。それでどうかなと思って誘ったんですが、あまり乗り気じゃなかったですか?」

「いいえ。滅多に来ないので、有難いです。」

そうなんだ。

警察官って、タダで美術館に入れるんだ。

父親が警察官なのに、知らなかった。

「今は、何やってるんでしょうね。有名な画家とかならいいな。」

「美術に詳しいんですか?」
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