婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。
 空気が冷たくなってきたと感じてふと見上げると、空が曇ってきたようだ。
 そろそろ戻らないと雨が降りそうだ。
 そう思ってサルジュに声をかけたが、それよりも早く雨が降り出した。
 思っていたよりも強い雨で、雷鳴まで轟いている。
 そのため木陰に隠れることもできずに、あっという間にずぶ濡れになってしまった。
「今年も雨が多いようだな」
 濡れた金色の髪をかき上げて、サルジュが空を見上げて呟く。
 サルジュとアメリア、そして護衛のカイドは農作業用の古びた小屋に避難していた。
濡れたままでは体調を崩してしまう。早く馬車に戻らなくてはならないが、あまりにも激しく降るので、もう少し小降りになるまでここで待機したほうがよさそうだ。
「……雨」
 叩きつけるように降る雨の音を聞いていたアメリアは、ふと思いついてサルジュを見た。
「雨を再現する呪文を使えば、水遣りの魔法の代わりになりませんか?」
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