離縁するつもりが、極上御曹司はお見合い妻を逃がさない
〝私〟と言っていたのは見合い用の顔で、〝俺〟というのが普段の彼なのか。

それにしても……。


「事情聴取といいますと?」

「その着物姿、ずっと見ていたいくらいだけど苦しいだろ?とりあえず着替えようか」

「はい」


たしかに苦しい。
この姿では気を抜けないし。

けれども、着替えるってどこに行くつもり?

質問したいことだらけだけれど、嘘をついていた手前こちらからは聞きにくい。
私は黙って車に揺られていた。


タクシーはやがて繁華街に差しかかり、大きなビルの前で止まる。

カードで支払いを済ませた津田さんは、先に降りて私に手を差し出した。

やはり動作がスマートだ。
海外経験があるのかもしれない。

タクシーから降りたあと手を離したのに、彼に再び握られて今度は腕をつかまされてしまった。


「足、痛いんじゃない?鼻緒は指で挟むようにしてみて。奥まで足を入れると擦れるから」


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