離縁するつもりが、極上御曹司はお見合い妻を逃がさない
そうだったのか!

そんなことまで知っているとは、と感心したが、それより慣れない草履のせいで指と指の間の皮がむけて痛むことにいつ気づいたのだろう。

実は約束の時間より早く着きそうで、味楽から少し離れたところでタクシーを降りて歩いたのだ。

緊張を和らげたいのもあったのだけれど、かえって緊張が増した上、足の皮まで剥けてしまったという大失態。

とはいえ、味楽では足袋姿だったのに。


「どうしてご存じなんですか?」
「さっき、草履をはいたときため息をついたよね」


そうだっけ?
まったく無意識で記憶にない。


「それに、歩きだした瞬間、笑顔が消えた」


たしかに、またこの草履で歩くのかと身構えたけれど、そんなふうに観察されていたとは知らなかった。


「その通りです」
「靴も用意してもらうから、少し我慢して」


靴?
話が読めないものの、ふと目の前のビルを見上げて気がついた。


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