離縁するつもりが、極上御曹司はお見合い妻を逃がさない
私は終始おどおどしていたのに、直秀さんは堂々とお礼を口にした上、笑みまでつけて松村先生と別れた。


「蛍」
「は、はい」


まだ名前を呼ばれることですら慣れなくて、いちいち鼓動がうるさくなる。


「いいじゃないか、そのスカート。似合ってる」
「……ありがとうございます」


まずい。これから授業なのに顔が赤くなっていないだろうか。

こうしたやり取りに慣れていなくてドギマギしていると、彼が私の目の前まで歩いてきて頬に手を伸ばしてくる。

な、なに?


「まつげ、ついてた」


まつげ?

まつげを取ってくれただけなのに恥ずかしすぎて視線を床に落とすと、彼は私の耳元に口を寄せる。


「そんなぎこちないと偽装だとばれるぞ」


このゾクッとするような低くて甘い声は反則よ。


「すみません」


そうはいっても、どうしたらいいかわからない。

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