離縁するつもりが、極上御曹司はお見合い妻を逃がさない
「やっぱりそう思いました? 退院に向けて頑張っていたんですけど、延期になってしまって。多分、引っ越してしまう好きな男の子にもう会えなくなってしまったからじゃないかな」


憶測ではあるけれど、治療に耐える彼女のモチベーションはその男の子だったのだ。

だから私が婚約したと話したとき、『私もいつか結婚できるのかな?』としんみりしてしまったのだと思う。


その男の子は同級生で幼なじみらしく、ずっと片思いしているんだとか。

でも、父親の仕事の都合でイギリスに行ってしまうらしい。

喜多川先生とは恋バナをしにくいとかで、よく私のところに話しに来てくれた。

本当なら、学校の友人と盛り上がりたいだろうに、それすら叶(かな)わない。


「そう……」
「あっ、行かなくちゃ。失礼します」


そろそろベッドサイドの授業時間だ。

軽く頭を下げて離れようとすると、不意に腕を握られた。


「蛍。またあとで連絡する」
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