Butler and Isla
アイラ・ホワイト
父親がジュリエットとケイの結婚の承諾をしてから数週間後、両家の顔合わせが行われ、ジュリエットは両家の親が見守る中、ケイの家に代々受け継がれているという婚約指輪を嵌められた。ダイヤモンドとアメジストが使われたとても豪華な指輪である。

正式に結婚が決まってからは、屋敷中がお祝いのムードに包まれていた。ジュリエットが廊下を歩くたびに「おめでとうございます」と言われ、普段は無表情な父親も驚くほどニコニコしている。

「ジュリエットお嬢様、おめでとうございます。もう「お嬢様」ではなく「奥様」になられるのですね……」

婚約が決まった翌日、顔を合わせたノエにそう言われた時、ジュリエットはいつものように笑うことができず、ただ俯くことしかできなかった。

好きな人とは結ばれることができず、アイスバーク家に嫁いでしまえばノエとはもう会うことができない。結婚をした貴族の娘に次に待っているのは、跡継ぎを産むということだけである。
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