エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
《……迷惑か?》

「まさか。ただ今までこんなに早く帰って来てくれたことがないから驚いて」

《そうだな》

彼の声音が明らかに沈んだ。責めているような口調だっただろうか。なんだか気まずい。

(文句を言いたい訳じゃないのに)

今はお互い不自然な程気を使ってしまっている状態だ。微妙な雰囲気を消したくて、話題を変える。

「夕食は、一哉さんが嫌じゃなかったら私が作るけど」

《嫌な訳ないだろ? 久しぶりの澄夏の料理、楽しみだよ》

一哉も気持ちを切り替えてくれたようだ。

「リクエストはある?」

《なんでもいい》

「うーん……それが一番迷うんだよ?」

《はは、悪い。それじゃあカレーがいいかな》

澄夏は目を瞬いた。またなんとも平凡なリクエストだ。でも一哉が食べたいというのならいいかもしれない。

「分かった。七時頃に食べられるように、用意しておくね」

《ああ。後でな》

電話を終えた澄夏は、スマートフォンを持ったままリビングのソファに腰を下ろした。

(一哉さん、優しい声だった)

よい方に考えすぎては駄目だと分かっているけれど、彼は澄夏の帰宅を喜んでいるように感じた。

(本当にこのままやり直せるのかな)
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