エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
一哉が取りこぼしたものがあるかもしれないと思ったからだけれど、彼の仕事は完璧だったようで、澄夏の出番は一度も無かった。

到着した広場で拾ってきた殻の処理をしながら、辺りに視線を巡らす。

彼がさっき『じゃあ、また』と言ったから、近くにいるかと思ったのだ。

だけどいくら探しても一哉の姿は見つからなかった。

その後の清掃会解散の挨拶になっても一哉は現れず、澄夏は落胆しながら自宅に帰った。

あのときの『また』はただの社交辞令だったのだ。

(残念だな。須和さんともう少し話してみたかったのに)

遠目から見て憧れていた彼との会話は緊張して、上手く話せなかった。

でも彼はたどたどしい澄夏の言葉をしっかり聞いてくれていたし、笑顔を見せてくれた。

(頭に乗った葉っぱも取ってくれたし……優しい人だった)

彼とのひと時を思い出すと胸が甘くときめく。

別れたばかりなのにもう一度彼に会いたいと思う。
とは言っても、澄夏に自分から会いに行く程の積極性と行動力はなく、偶然の再会を期待して日々を過ごしていた。

どこに出かけても気付けば彼がいないかと姿を探していた。
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