エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
これは脅しで、お金を貸してもきっと返ってこないと悟る。
こんなことになるのなら、カフェに寄らずに帰ればよかったと後悔していると、スーツ姿の男性が私たちのテーブルの前で立ち止まった。
「ふたりでなにをしているんだ?」
「っ!」
突然、目の前に姿を見せた龍臣さんに驚いて言葉に詰まる。
涼ちゃんに待ち伏せされたことは、誰も知らないはず。
なぜ私たちがこのカフェにいるとわかったのか不思議に思い、龍臣さんに尋ねようとした。けれど、私と涼ちゃんに向けられた鋭い視線に怖気づく。
婚約者が内緒で元カレに会っていたら、不機嫌になるのは当然だ。
「涼ちゃんに……お金を貸してほしいと頼まれて……」
「なるほど。そういうことか」
うしろめたい気持ちを胸に抱えて事情を説明すると、龍臣さんが納得したようにうなずく。
「今後も美桜につきまとうようなら、法的処置を取るのでそのつもりで」
龍臣さんの毅然とした態度は有無を言わせない迫力があって、涼ちゃんもなにも言い返せない。
「美桜。行こう」
「はい」
お金をせびる涼ちゃんにどう対処したらいいか悩んでいたときに、颯爽と現れた龍臣さんを心強く思い、テーブルの上に置かれた伝票を手に取って出口に向かう彼の後を急いで追った。
「あっ、お金」
「ここは俺が払う」
バッグからお財布を出そうとする私の動きを制した龍臣さんが、手際よく会計を済ませる。
「すみません。ありがとうございます」
「いや。気にしなくていい」