エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす

バーの窓から見える大観覧車のデジタル時計は、午後九時四十五分と表示されている。

気持ちが沈んでいる今の私には、みなとみらいのきらびやかな夜景はまぶしすぎる。カクテルを飲み終わったら家に帰ろう。

そう心に決めたとき、スマホのバイブ音が耳に届く。

「ちょっと失礼」

彰仁さんがスーツのジャケットの内ポケットからスマホを取り出し、席を立ってバーから出て行く。

龍臣さんによく似た背筋が伸びたうしろ姿を見たら物悲しい気分が胸に広がり、今まで我慢していた思いが口から漏れてしまった。

「龍臣さんに会いたい」

彰仁さんには悪いけれど、クリスマスイブという特別な日は龍臣さんと過ごしたかった。

込み上げてきた涙が瞳からこぼれ落ちそうになったとき、横から聞き覚えのある声が耳に届く。

「俺も会いたかったよ。美桜」

今、龍臣さんは大阪にいるはず。会いたい気持ちが強すぎて、幻聴が聞こえたのかもしれない。

半信半疑で顔を上げると愛する人の姿が目に映る。

「ど、どうして?」

今日のお昼に【いつ東京に戻れるかわからない】と、たしかに連絡があった。

龍臣さんが目の前にいるのが信じられずに瞬きを繰り返していると、彼が隣に腰を下ろした。
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