エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
幼い頃からピアノ教室に通っており、将来は音楽大学に進学したいと思っていた。
「でも親に反対されて仕方なく附属の大学に内部進学しました。初めてライブハウスに行ったのは、大学三年生のときです。ステージに立つ涼ちゃんはキラキラしていてまぶしくて、ひと目見て好きになりました。夢を簡単にあきらめた私にとって涼ちゃんの存在は心のよりどころで、メジャーデビューを目指す彼を応援することで、満たされない心を埋めていたんだと思います」
黙って私の話に耳を傾けていた彼が「そうか」とつぶやく。
ギターを掻き鳴らして歌うカッコいい涼ちゃんの姿が二度と見られないと思うと、どうしよもなく悲しくなって涙が込み上げてきてくる。
マンションのエントランスで散々泣いたのに、まだ涙が出るなんて驚いてしまう。
「うっ」
声を詰まらせて泣く私を慰めるために、彼が隣に移動して来て頭を優しくなでてくれる。
「あんなチャラい男のことなんか、綺麗さっぱり忘れろ」
また涼ちゃんを悪く言っているとあきれたものの、彼がいなかったら後悔しかない最低な別れ方をしていたかもしれない。
最後に涼ちゃんと、きちんと向き合えてよかった。
そう思っても、傷ついた心は少しも癒えない。