エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす

今日は日曜日で仕事は休みのはず。それなのに、取引先の結婚披露宴にまで顔を出さなければならないなんて次期社長も大変だ。

「この後の予定は?」

「家に帰ります」

「だったら送るよ」

酔っ払いから助けてもらったのは感謝している。でも、縁談の返事を保留にしている相手とふたりきりになるのは気まずい。

「いえ。結構です」

素気なく断っても、彼は気にも留めない。

「遠慮しなくていい。さあ行こう」

「……はい」

ホテルのロビーで揉めたら目立ってしまう。

私の話に耳を貸そうとしない朝比奈さんに、なにを言っても無駄だとあきらめて歩を進めた。

「この前は慌ただしく帰ってしまってすまなかった」

「いえ。お仕事中だったのに、お呼び出してしまってすみませんでした」

格式のあるホテルのロビーを、男性にエスコートされて歩くのは今日が初めて。ブラックスーツにシルバーのネクタイ姿がよく似合っている彼の体が肩に触れて、胸がドキッと跳ね上がるなか会話を交わす。

「結局、あのカフェに何時まで居たんだ?」

「十時までです」
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