エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす

彼が言う『この前』とは、体調が悪かった私のお見舞いに訪れたときのことだ。

あのときはパジャマ姿だというのも忘れてプロポーズを受けたけれど、思い返してみるとたしかにムードがなかったと気づく。

ふたりにとって忘れられない思い出になるように、ロマンティックな場所でプロポーズを仕切り直してくれた気遣いがうれしい。

朝比奈さんを好きだと自覚した今、プロポーズを断る理由はない。けれど、彼は大手企業であるアサヒナ自動車の次期社長で、誠実なうえにルックスもいい。

非の打ちどころがない朝比奈さんに、なんの取り柄もない私は不釣り合いなのではないかという思いを拭い去ることができない。

「本当に私でいいのでしょうか」

不安をそのままにはしておけずに思い切って尋ねると、彼が笑みをこぼした。

「妊娠したと言って動揺して泣いたり、今日だって少し目を離した隙にはぐれただろ? どこか危なげで放っておけない美桜を守れるのは俺しかいないと思わないか?」

腰を屈めた彼が、私の顔を覗き込んで首をかしげる。
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