クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「君が働いていた職場の通信や勤怠に関するデータ。捜査のために当然提出させるべきものを、警察は手に入れることができない。警察の狙いはそこだ」

「つまり、凛花ちゃんを重要参考人にしたてあげて、提出させようって魂胆……」


菜々子さんが自分で言葉にして理解を示し、最後は「汚い」と眉をひそめた。


「無実の一般人を巻き込むなんて。こうなったら、警察が言うオンラインゲームでのネット不正使用について、さっさと無罪を表明しましょうよっ」

「いやいや。そもそも訴えられてないんだから、有罪も無罪もないだろ」


東雲先生が菜々子さんを苦笑で制し、私に視線を戻す。


「でもまあ……瀬名さん。まずは、前の勤務先に確認を取れないか?」

「え?」

「君のネット使用について調べたことがあるか。そしてそれを警察に相談したかどうか」


ゆっくり噛み砕くような口調で、軽く身を乗り出してきた。


「謂れのない疑いをかけられていると言って、逆に反論証拠を揃えてもらうってことですね。上手くいけば、警察が喉から手が出るほど欲しいデータを、鼻先にぶら下げてやれるかもしれない」


親指を立て、バチッとウィンクする中西先生に、私は思わず瞬きを返し……。


「そうか。警察に無理でも、私なら……」


自分に言い聞かせるように言って、ごくりと唾を飲んだ。
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