クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「おまっ……なんて無茶なことを」

「ごめんなさい! 私、少しでもなにかしたくて」


身を竦めて謝られ、俺はハッと浅い息を吐いた。
ドスッと腰を落とし、ガシガシと頭を搔き乱す。
凛花が横から、恐る恐るといった感じで俺を覗き込み……。


「でも、奎吾さんや警察の名前は出してません。今、私のはとこが事務の仕事をしているので、事情を話せば協力してもらえます」

「……はとこ?」


俺がピクッと眉を動かして反応すると、背筋を伸ばして頷く。


「六郎叔父様の甥で、時任(ときとう)和人君といいます。私より二歳下で、今年の春から事務所の正職員として働いてるんです」

「時任、和人……」


俺はその名を反芻して、額に手を当てた。
はとこ。凛花の親族でも、さすがにそこまで遠いと、俺も把握していなかった。
事件が発覚したのは二年前だ。
藤崎六郎の甥とは言え、事務所や彼の政治活動と関係がない大学生では、捜査線上にも名は挙がっていない。


しかし、今は正職員として、当時の凛花と同じ仕事をしている。
調べておくに越したことはない――。


「奎吾さん?」


思考を巡らせていたところを窺う口調に、ハッと我に返る。


「いや、なんでもない」


俺は彼女に視線を戻し、ぎこちなく微笑みかけた。
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