クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
俺は、一度ふうと息をついた。


「藤崎凛花が事務所に連絡をして、時任と話したのは昨日のこと。昨夜帰宅していないなら、好都合です。証拠を押収できる可能性が高いと思料……」

「瀬名」


部長が、淡々と報告を続ける俺を遮った。
俺が言葉を切って視線を返すのを待ち、


「奥さんは大丈夫なのか?」


身を乗り出して、声を潜める。
俺は、ピクッと眉を動かした。


「……そのことですが」


改まって足を揃え、背筋を伸ばす。


「遅かれ早かれ、時任は妻に接触を図ろうとすると考えます。私もこの先は現場に合流させていただきたく……時任の身柄を拘束するまで、私が職務離脱することを許可願います」


腰を直角に曲げて、深々と頭を下げた。
警察庁所属の警察官僚として、警視庁捜査二課の管理官として、百パーセント私情の甘えた願い出なのは重々承知している。
キャリア失格と罵声を浴びる覚悟で、自分の足元をジッと見据えて部長の許可を待った。


「……本当に、お前は」


呆れたような口調に、固く目を閉じる。
しかし。


「お前たちは、か」


苦笑が混じるのに気付き、ゆっくり顔を上げる。
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