クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
真正面に向き直り、まるで他人事みたいに静かに語る彼を、そっと見つめた。


「警察の身体能力はズバ抜けている。まだ見苦しいかもしれないが、驚異的なスピードで消し去ってやるから、怖がるな」

「そんな、奎吾さん。見苦しくなんてありません」


私はそう言って、改めて彼の背中を指でなぞった。


「でも、奎吾さんの背中、とても綺麗なのに。私のせい……」

「まだ言ってるのか」


しゅんと肩を落とす私を、奎吾さんが溜め息で遮った。
身を捩って振り返ったかと思うと、勢いよく私の頭を抱え込み、覆い被さってキスをする。


「っ、んっ!」

「凛花……」


いつもより執拗に、いやらしい音を立てるキス……きっと、わざとだ。
唾液の糸を引いて唇が離れると、奎吾さんがハッと熱い吐息を漏らす。


「凛花。俺は今でも、もしあの時この身体が動いてくれなかったら……と考えて、悪夢を見ることがある」

「ふえ……?」


息を乱し、気の抜けた声で聞き返す私に、柔らかく目尻を下げた。


「時任が落としたナイフが、俺の背中を掠めてくれてよかった。そうじゃなかったら、お前のどこかを傷つけていたかもしれない」

「っ……」

「お前の綺麗な身体も可愛い顔も、無傷でよかった。この傷は、男としての俺の勲章……何度もそう言ってるだろ」


くっと眉根を寄せて、責任を感じて落ち込む私を咎めるように見据える。
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