クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
一服して、気分を新たに仕事を続けるつもりだったが、苛立ちで気が昂り、集中できなくなった。
俺は執務室に戻ったものの、早々に仕事を諦め、日付が変わる前に警視庁を出た。


麻布のタワーマンションに帰り着いた時、腕時計の針はちょうど午前零時を指したところだった。
半年前から法律事務所で働き始めた凛花は、すでに自室に下がっている。
しっかり閉じられたドアの隙間からは、明かりも漏れていない。


もう寝ているだろう。
俺はドアの前で一度かぶりを振って、そこから立ち去ろうとした。
しかし、後ろ髪を引かれる気分で足が止まる。
彼女の部屋を振り返り、意を決してドアを開けた。


やはり電気は落ちていた。
凛花はベッドで眠っている。
規則正しいスースーという寝息を聞いて、俺はベッドに歩み寄った。
穏やかな寝顔を見下ろし、無意識に顔が綻ぶのを感じながら、軽くベッドに腰かける。


俺の体重でギッと軋む音にも、一瞬怯む。
しかし、凛花が起きる様子はなく、ホッと胸を撫で下ろした。
恐る恐る手を伸ばし、額にかかる前髪をそっと分けた。


「ん……」


凛花はわずかに眉間に皺を寄せて声を漏らしたものの、すぐに力を解いて呼吸を続ける。
寝顔はまだあどけない。
俺は目尻を下げたまま、ほんの少し背を屈めた。
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