クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
彼女は、自分のショップの商品が見るからに不似合いな私に、ちょっと意表をつかれた顔をしたけど、そこは接客のプロだ。
私が事情を説明しなくても、次々と商品を手に取って説明し始めた。
店員さんの一押しは、黒い総レースのブラジャーとペアのショーツに、ガーターベルト。


『お客様、可愛いらしいから。このくらい際どい方が意外性あって、効果てきめんですよー』


意外性エフェクト……拓哉さんもそう言っていた。
彼女は商品を指先で摘まんで、パチパチと瞬きを繰り返す私の目の高さに掲げた。
ブラもショーツも、向こう側が見通せる。


際どい、とは言われたけど、そもそもこれを下着と呼べるんだろうか。
目を白黒させて怖気づく私に、店員さんが今度はヒラヒラのベビードールを揺らした。


『これと合わせると、ちょっと控えめになるかな。でも、お客様だったら、より煽情的でいいかも』


私は大きく目を見開いたまま、ごくんと唾を飲んだ。
店員さんのセールストークに乗せられ、トータルコーディネートでお買い上げ。
試着を勧められたけど、あまりの羞恥で頭が沸騰しそうだったから、サイズを確認しただけで、逃げるようにショップを後にした。
家に帰ってきて、一人で試してみるつもりだったけど……。


「むしろ、着てる方が恥ずかしいような……」


着てみるまでもない。
手に取ると、手相が読めるほど透け透け。
まったく下着の意味をなしていない。
いや、もう、これを衣類と言ってはいけない。
< 67 / 213 >

この作品をシェア

pagetop