クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
私はこの下着を着けた自分を想像して、顔から火が噴きそうなほど赤面した。


――セクシー?
煽情的だろうか。
胸ぺったんこで、豊満とはほど遠い体型の私じゃ、貧相でみすぼらしいだけなんじゃ……。


「無理っ。こんなの、奎吾さんの前で着れない」


私は、値札が付いたままの下着をザッと掻き集め、ショップの紙袋にまとめて突っ込んだ。
ポイと放り投げ、わざわざ布団を被って目を背ける。


こんなエッチな下着に頼るんじゃなく、ちゃんと私の力でなんとかしなきゃ。
なんとか、なんとか……そうだ、結婚記念日。
奎吾さんには、一緒に過ごしたいと、休暇をお願いしてある。


デキた妻らしいこと。
彼が目を細めて喜んでくれること……なにがあるだろう。


「! そうだ」


私は独り言ちながら、ムクッと身体を起こした。
奎吾さんは私に『家事もしっかりやってくれている』と言ったけど、それは整理整頓された家を見ているだけで、彼に料理の腕を振るったことは皆無に等しい。
一応これでも、料理には自信がある。
奎吾さんの好きなものをたくさん作って唸らせたい。


あと三日。
準備する時間はあるし、奎吾さんに見直してもらうチャンスだ。
とてもいいアイデアが閃いた気がして、私は発奮した。


そうと決まれば、早速メニューを考えようと意気込み……。
次の瞬間、ピタリと動きを止めた。
――私、奎吾さんの好物がなにかも知らない。
< 68 / 213 >

この作品をシェア

pagetop