クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
やがてほろ酔いになり、自室に下がった私は、パジャマに着替えようとクローゼットを開けた。
すると、買ったきり放置していた、ランジェリーショップの紙袋が目に留まった。
本来の役目を果たせないまま、ひっそりとその存在を忘れられている……私みたいだ。


――可哀想。
買った責任を果たす気分になって、紙袋を引っ張り出した。
丁寧に値札を取り、下着を着けてみた。
姿見に映して見てみても、予想通り貧相でセクシーの欠片もない。
なんだか、自分が惨めになった。


急いで脱ごうとした時、ドアの向こうから奎吾さんの声がして動転した。
着替える間もなく、ベッドに潜ってしまった。
当然、彼は私の狸寝入りに騙されてくれず――。


「っ……」


先ほどまでのめくるめく出来事が鮮明に脳裏に蘇り、私はひゅっと喉を鳴らして息をのんだ。
彼の指や唇の感触が全身に刻み込まれ、まだあちこちがビリビリ痺れている。
恥ずかしいのに、彼に触れてもらえたことがとても嬉しくて、初めての快感にのまれ乱れてしまった。


だけど、奎吾さんは怒っていた。
なにか、私と拓哉さんを誤解していた。
――どうしてだろう。


私は下着姿を見られ、激しい羞恥で頭が真っ白だったけど、とにかく言い訳しようとした。
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