もう一度会えたなら
 今日は朝から仕事が捗る。
 もちろん、“夜のお楽しみ”が待っているからだ。
 久々のデート、そして明日は休日。食事の後はもちろん……。
 そんなことを考えながらにやけている自分に気付いて、美紀はギッと下唇を噛んだ。

 午後からも淡々と仕事をこなし、午後四時を少し回った頃、大希がデスクにやって来た。嫌な予感。

「ごめん。また残業になった」

 大希が小声で言った。

「そう……仕方ないね。分かった」

 美紀の予感は的中して、またデートが流れてしまった。次こそは、と期待すればする程、落胆が激しい。

 ――期待し過ぎるのはやめよう。いい加減学習しないと。

 いつもこの瞬間から一気に気力が失せるのだ。朝に聞かされなかっただけましかもしれない。
 仕方のないことだとは分かっている。一生懸命仕事を頑張る大希の姿に惚れたのだから。
 そんな大希が夫になるなんて素晴らしいことなのだ、と美紀はいつも自分にそう言い聞かせる。

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