もう一度会えたなら
 それから数日後、久しぶりに大希とのデートの約束に漕ぎ着けた美紀は、朝から浮かれていた。

「今日めちゃくちゃ可愛いじゃん。仕事終わりにデートだな?」

 顔を合わせるなり海斗に聞かれ、「やっとです」と美紀ははにかんだ。
 不意に、海人が何かを思い出したように、ぽん、と手を打った。

「美紀ちゃんも甘いもの好きだって言ってたよね? もうすぐさぁ、駅前にパンケーキ屋ができるみたいなんだけど、そこ人気店の二号店ですげぇ旨いらしくて。オープンしたら一緒に行ってみない? 婚約祝いに腹一杯ご馳走するよ」

「えーっ、ほんとですかぁ? 私パンケーキ大好きなんです! 行きたーい!! てか私、めちゃくちゃ食べちゃいますよ!」

 スイーツ男子の海斗と、この日はパンケーキの話で盛り上がった。

「そろそろ行く?」

 海斗に促され、美紀は残りのコーヒーを飲み干し、一緒に店を出た。
 そうして、自転車を押しながら歩く海斗と駅に向かう。

「今日も一日頑張ってください」

「美紀ちゃんもね」

 そう言い合って海斗は自転車に股がり、駅前で別れる。それがこのところの美紀の日課になっていた。

< 9 / 26 >

この作品をシェア

pagetop