もう一度会えたなら
レトロな雰囲気溢れる店内は、外とは別世界のようで、ゆったりとした時間が流れている。
程なくしてBセットが運ばれてきた。
「わあ、おいしそう!」
美紀は思わず声をあげた。
ワンプレートにお洒落に盛り付けられたBセットは、メニューの写真よりもずっと色鮮やかで美紀の食欲を掻き立てた。
「お嬢さんにはフルーツのサービス」と小声で言った後、「ゆっくりしていってね」と柔らかい笑顔を見せ、女性店員は再びカウンターの中へ戻っていった。
モーニングメニューの写真にあったくし切りオレンジ以外に、一口サイズにカットされたキウイといちごが、小さなガラスの器に盛られてプレートに収まっていた。
女子なら、皆こぞってスマホで撮影するような、映えるモーニングセットだ。
接客の文言だとわかってはいるが、女性店員の「ゆっくりしていってね」は、彼女の本心のように思えて、美紀の心は温かくなった。
「あ、武さん! 俺、明日から嫁さんと二泊三日で旅行だから、次は週明けになるよ」
徐にカウンター席から立ち上がった中年の男性が、マスターに話している。
「ああ、前に言ってた温泉旅行だよねえ? 明日からなんだ。そりゃ楽しみだねえ。ゆっくりしておいでね」
マスター武さんが笑顔で答えている。
「ママにもちゃんとお土産買ってくるからね。あ、武さんと晩酌でつまめるものなんかがいいかな」
会計をしながら、先程の女性店員にも話している。
――なるほど。
やはりあの女性店員は、マスター武さんの奥さんのようだ。
厚切りトーストを頬張りながら、美紀はそのやりとりを眺めていた。ほとんどが常連客のようで、客というよりは家族のようで、武さんとママは決まって「いってらっしゃい」と声を掛けていた。
程なくしてBセットが運ばれてきた。
「わあ、おいしそう!」
美紀は思わず声をあげた。
ワンプレートにお洒落に盛り付けられたBセットは、メニューの写真よりもずっと色鮮やかで美紀の食欲を掻き立てた。
「お嬢さんにはフルーツのサービス」と小声で言った後、「ゆっくりしていってね」と柔らかい笑顔を見せ、女性店員は再びカウンターの中へ戻っていった。
モーニングメニューの写真にあったくし切りオレンジ以外に、一口サイズにカットされたキウイといちごが、小さなガラスの器に盛られてプレートに収まっていた。
女子なら、皆こぞってスマホで撮影するような、映えるモーニングセットだ。
接客の文言だとわかってはいるが、女性店員の「ゆっくりしていってね」は、彼女の本心のように思えて、美紀の心は温かくなった。
「あ、武さん! 俺、明日から嫁さんと二泊三日で旅行だから、次は週明けになるよ」
徐にカウンター席から立ち上がった中年の男性が、マスターに話している。
「ああ、前に言ってた温泉旅行だよねえ? 明日からなんだ。そりゃ楽しみだねえ。ゆっくりしておいでね」
マスター武さんが笑顔で答えている。
「ママにもちゃんとお土産買ってくるからね。あ、武さんと晩酌でつまめるものなんかがいいかな」
会計をしながら、先程の女性店員にも話している。
――なるほど。
やはりあの女性店員は、マスター武さんの奥さんのようだ。
厚切りトーストを頬張りながら、美紀はそのやりとりを眺めていた。ほとんどが常連客のようで、客というよりは家族のようで、武さんとママは決まって「いってらっしゃい」と声を掛けていた。