もう一度会えたなら
翌朝、美紀はまた『まほろば』を訪れた。
「あら、おはよう。今日も来てくれたんだ」
ママは目を丸くした後、にっこり笑った。
「お好きな席どうぞ」と言われ店内を見渡すと、今日はいくつか空席があった。すると、奥のテーブル席から美紀に手を振る見覚えある男性。
――あっ、昨日のポテサラの……と言いかけた時、「一緒に食べませんか?」と彼から声を掛けられた。
「あら、二人はお知り合い?」
驚いた様子のママに、「いえ、昨日ここで……」と美紀ははにかんで微笑んだ。
これが、海斗との相席のきっかけだ。
「海斗でいいよ」と言われたが、美紀は彼を「海斗君」と呼び、二人はあっという間に打ち解けあった。それから時々店に顔を出していた美紀は、やがて、会社へ行く平日はほぼ毎朝、海斗と向かい合ってモーニングセットを食べるようになっていた。
聞き上手な海斗はいつも表情をころころ変えながら美紀の話を聞いていた。毎日会話が弾む二人の様子を知る常連客からは「付き合えばいいのに」と茶化される程、海斗とは波長が合い楽しい時間を過ごしていた。友人のように冗談を言い合ったり、それでいて美紀の方はまだ敬語が抜けず、“親しき仲にも礼儀あり”の、程よい距離感を保ったそんな関係だった。
いつの頃からか窓際の一番奥の席に『予約席』のプレートを立てて、二人の為にママが空けておいてくれるようになった。
ここは美紀にとって、とても居心地の良い癒しの場所となっていた。
その頃には、常連客の証のように皆から「いってらっしゃい」と送り出してもらえるようにもなっていた。
「あら、おはよう。今日も来てくれたんだ」
ママは目を丸くした後、にっこり笑った。
「お好きな席どうぞ」と言われ店内を見渡すと、今日はいくつか空席があった。すると、奥のテーブル席から美紀に手を振る見覚えある男性。
――あっ、昨日のポテサラの……と言いかけた時、「一緒に食べませんか?」と彼から声を掛けられた。
「あら、二人はお知り合い?」
驚いた様子のママに、「いえ、昨日ここで……」と美紀ははにかんで微笑んだ。
これが、海斗との相席のきっかけだ。
「海斗でいいよ」と言われたが、美紀は彼を「海斗君」と呼び、二人はあっという間に打ち解けあった。それから時々店に顔を出していた美紀は、やがて、会社へ行く平日はほぼ毎朝、海斗と向かい合ってモーニングセットを食べるようになっていた。
聞き上手な海斗はいつも表情をころころ変えながら美紀の話を聞いていた。毎日会話が弾む二人の様子を知る常連客からは「付き合えばいいのに」と茶化される程、海斗とは波長が合い楽しい時間を過ごしていた。友人のように冗談を言い合ったり、それでいて美紀の方はまだ敬語が抜けず、“親しき仲にも礼儀あり”の、程よい距離感を保ったそんな関係だった。
いつの頃からか窓際の一番奥の席に『予約席』のプレートを立てて、二人の為にママが空けておいてくれるようになった。
ここは美紀にとって、とても居心地の良い癒しの場所となっていた。
その頃には、常連客の証のように皆から「いってらっしゃい」と送り出してもらえるようにもなっていた。