【短】逃げないことを、逃げの言葉にするのはいい加減して

私は自宅でデザイン系の仕事をしている。
その種類は多岐に渡った。


所謂、『なんでも屋』。


だから、得る収入も下手をしたら彼の倍近くになってしまってもおかしくはない。


けれどそれは二人の中で暗黙の了解みたいなものであった筈なのに、何処から…それが綻び始めたのか。


酒の場での愚痴は、格好の餌だ。
それが、意中の存在のモノであれば、尚更の事。


一度、不貞の現場に出食わした事があって、その時の相手が開き直ったように、こう言って来た事がある。



"奥さんくらいのヒトなら、別に彼じゃなくても良いでしょう?"


私はそれを聞いて、今世紀最大とも言うべきの溜息を吐いた事を思い出す。

『そう。じゃあ、【熨斗付けて】くれてあげてもいいのよ?私クラスの女じゃ駄目なら、今まで続かなかったわけだし?』


と、確か返したと記憶している。
記憶が正しければ、の話だけれど…。

その時、相手はわなわなと口唇を噛み締め、顔を真っ赤に染めながら、怒りを顕にしてたな…そう言えば。

自分でもこの手の事に記憶が曖昧になるのもおかしな話だ。

だって。
どれくらい、私から「別れたい」と申し出ても、「NO」と言ってけして別れてくれないのは、彼の方だし。


愛情…。


そんなものはとっくの昔に冷めているのにも関わらず、ここぞという時に、使ってくる、『愛してる』の言葉…。


そんなの…だから、なんなの?


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