【短】逃げないことを、逃げの言葉にするのはいい加減して
今更の話。
そんな上っ面の感情で絆される程の愛情なんてもう、これっぽっちも残っていないし…私には邪魔でしかない。
それでも、今まで黙ってやり過ごして来たのは…世間体のせいかもしれない。
バツが付くと、女は色々とやり難くなる事も多くなる。
諸手続きを踏むのも、男より倍面倒くさいし。
まぁ…結婚してから三年、子供がいなかっただけ良しとしようか。
この男との子供だけは、と頑としてその薄い膜を取る行動を避けていたのも、他へ行く原因か。
そう言われればそうかもしれない。
だって、どうしても生理的に受け付けないのだから仕方ない。
そんな事を考えていたら、不意に机の上のスマホが鳴った。
こんな時間に掛けてくる相手は、言わずもがな。
『奈々恵…?、あのさ、今日急遽飲み会入っちゃってさ。多分、てっぺん越えそうだから、先寝てて?ごめん。…愛してるよ』
上司との飲み会?
てっぺん越すまでとは、このご時世であるわけ無いだろうが。
はっ。
馬鹿馬鹿しい。